人と人がつながることで元気に薬局が地域の居場所のひとつに
- 大澤美紀
- 4月20日
- 読了時間: 3分
更新日:6月4日
「〇〇薬局」という看板やドラッグストアの中にある調剤薬局など,薬局は数も多く,お世話になる人も多いと思います.みなさんは,どのような基準で薬局を選ぶでしょう.病院の近くだから,自宅が近いからといった便利さで選ぶ人もいれば,お薬を届けてくれるので助かる,薬剤師さんの説明がわかりやすいといった「つながり」を大切にして選ぶ人もいるかもしれません.つなぐ・つくるプロジェクトのまちなか保健室注)のメンバーの1人,さくら薬局(大宮中川店)薬剤師の辻鈴美さんにお話を伺いました.

人と人がつながる薬局
辻さんは薬を届けるだけでなく「人と人とのつながり」や「薬局が地域の中で何となく立ち寄れる場所に」と考えています.家族の勧めもあって,薬剤師を目指した辻さんですが.大学卒業後は薬剤師ではなく,実験が好きだったということもあって,有機化学の実験助手を4年間勤めました.結婚を機に埼玉へ.新たな地で手にした「薬剤師募集」のチラシに,やってみようと応募し,子育てしながらの薬剤師人生が始まります.
今では薬剤師が自宅に薬を届けてくれることも増えていますが,まだそれほど多くなかった10年程前に,やどかりの里の精神障害のある人の自宅訪問をお願いしたところから,辻さんとやどかりの里とのお付き合いが始まります.やどかりの里のメンバー(精神障害のある人)からは毎朝「コンビニのチョコがおいしかった」「どうしてる?」……そんな電話が定期便のように来るようになったそうです.好きな芸能人や家族の話をしたり,薬を届けるだけでなく,さりげないおしゃべりからお互いに知り合っていくことに楽しさがあると,辻さんは言います.
最近では,がん末期の人の在宅ケアにも関わり,最期の時を自宅で送りたいと願う人に対応できるよう専用機械を導入して薬を届けています.待合室では「その服どこで買ったの?」と声をかけたり,子育て中にはいろいろなアドバイスをお客様からもらったり,薬局での世間話の中で「心と心が触れ合う」ことがとても嬉しいと,仕事のやりがいや思いを語ってくれました.
地域住民との交流
つなぐ・つくるプロジェクトの「まちなか保健室」では,薬局から血管年齢や身体の老化度を計測する機器を貸し出してもらい,地域住民の人との交流をはかっています.これも地域の薬局の取り組みの一つです.声がかかれば,自治会行事などにも参加.いろいろな人と知り合いになれることがとてもいいと感じているそうです.

趣味のケーキやパンづくりは,子育てしながら学校に通うほどの本格派.「薬局の一角で,カフェができたらな」「認知症の人や介護されているご家族がしゃべれるところがあるといい」「独居や孤独になりやすい人がおしゃべりだけでも来られる場所にできたら」と,これからの夢を語り出すと溢れるようにアイデアが出てきます.「薬局は敷居の高いところ.でもいつでも来られる場所にしたい」と熱い思いを語ってくれました.
「人と人のつながりで元気な地域をつくっていこう」というつなぐ・つくるプロジェクトの目指すところと,辻さんが薬剤師として取り組もうとしていることと,重なるところはたくさんあります.こんな薬局があったら行ってみようと思いませんか? まちなか保健室に辻さんのケーキが登場する日もそう遠くはないかもしれません. (大澤美紀)
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