「地域課題・ニーズ調査ワーキンググループ」の取り組みの報告の2回目となる今回は,高齢者,若者,困窮者等の制度の狭間におかれ,孤立した状態にある人たちの居場所づくりを進めている団体や,社会福祉協議会などの住民活動へのインタビュー(11団体29人)から見えてきた,さまざまな地域の課題と求められていることについて報告する.
複雑に絡み合ったニーズと抱える困難さ
インタビュー調査からは,学校に行くことや働くことができず居場所を求める若者,8050世帯(ひきこもりの長期化,高齢化からなる世帯)や頼れる家族のいない高齢者,日本語が話せない外国人,仕事を失い住まいも失っていく人たち等,制度の狭間で幾重にも重なる逼迫したニーズと困難さを抱える人たちの実態を知った.例えば人間関係や就労経験を積むことができないまま,生活習慣が乱れて孤立が常態化したり,情報や支援が届かず経済困窮に陥る人などの背景には,虐待や貧困,障害のある可能性が高い人も多いという.そして,非正規雇用などの労働環境もその困難さに追い打ちをかけているのだ.
自分らしさを生かせる文化を育む
これらの生きづらさを抱える人たちの集える場づくりに,団体の多くが力を注いでいた.複雑な課題を紐解きながら適切な支援に繋いでいくことはもちろんだが,まずは出会えること,互いに支え合える場づくりを大切にしている.特に印象深かったのは,外国籍の親や子どもを支援している団体の活動だ.日本は異文化や多様さを受入れづらく,外国籍の人や子どもたちの本来の能力が環境により発揮できていないことが大きな問題だという.外国籍の人たちの保護を目的とせず,多様な文化が交じり合うことを当たり前として,外国籍の人も自分らしく活躍していける,日本の文化や土壌を育てるために活動しているということだった.集う人たちの価値観を交じり合わせながら,1人1人が自分らしさや持てる力を発揮できる文化を育むことは,どのような生きづらさを抱える人たちにとっても大切なことに思える.
住民活動の現場では,地域住民同士のつながりが希薄になりつつある今,気がけあえる関係性が求められている.「集える場」は歩いていける身近な場にあり,待つだけでなくアウトリーチが重要なことも見えてきた.また,「地域に関わりたい」という住民が,思っていた以上にいることも知ることができた.
私たちにできること・求められていること
「まちなか保健室」や出会いの場づくりの「地域巡回」も地域に馴染んでいくことが当面の目標だ.また,さまざまな生きづらさを抱える人たちの,自分の力を生かせる活動や働ける場の必要性も,調査を通じてより確かなものとなった.調査では,飲食店の運営を通じて地域の居住支援の仕組みづくりを目指す人,介護保険制度などの既存の制度からこぼれ落ちるニーズに特化して支援する団体とも出会った.深い問題意識を持ちつつ軽やかに活動する人たちが地域にはたくさんいる.抱えている課題は切実で,一朝一夕には解決できないことも多いが,私たちの現場で日々向き合う課題と共通することばかりであった.やどかりの里だけではできない支援や活動づくりを,出会った人たちといっしょに取り組んでいきたい.そして新たにオープンしたエシカルcafé「としょかんのとなり」を,さまざまな立場の人たちと価値観を交じり合わせることで新しいものが生まれる場所として,大切に育てていけたらと思う.(中村 由佳)
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