ワーキンググループでの新たな出会いと学び
「地域課題・ニーズ調査ワーキンググループ」では,地域で孤立しがちな状況にある人の実態と求められていることを明らかにすべく,地域で活動するさまざまな団体や当事者へのインタビュー調査を中心に取り組んできた.今号からは2回にわたって,3年間のワーキンググループの取り組みについて報告する.今回は,当事者の声を中心にインタビュー調査の内容を報告する.
調査に協力してくれた人,団体
インタビュー調査は,11団体,29人の方々にインタビューさせていただいた.協力いただいた団体も多岐にわたり,若者支援や困窮者支援の団体,外国にルーツのある子どもたちの支援団体,住まいのあり方を研究している非営利団体など,何れも制度の狭間におかれ,孤立した状態にある人たちの居場所づくりなどを進めている団体だ.また,社会福祉協議会や地区の社会福祉協議会,地域包括支援センター,若年性認知症のある当事者などにも話を聞かせていただいた.
「経験したことは財産」
「人と話さないことが一番しんどかった」.そう語ったのは,困窮者支援団体で活動している人だ.彼は両親の介護のため企業を退職して介護していたが,両親が他界した時は貯金を使い果たし,頼れる人もおらず,再就職も叶わずホームレスの状態になったと言う.支援団体の人から声をかけられたことを機に,制度を活用して生活基盤を整え,現在はその団体に所属し,生活困窮者の生活相談や同行などを行っている.「支援団体の人に声をかけられた時は怖くて逃げ回ったけれど,今は経験したことは財産と思って活動している.これからは制度の改善運動にも力を注いでいきたい」と話してくださった.
彼が所属する支援団体は,“誰もが孤立することなくほっとできる社会”を目指し,生活困窮状態にある人や仕事や住まいを失った人への支援活動を行っている.生活困窮の状態にある人の中には精神疾患を患っていたり,何らかの障害が疑われる人もいる.適切な医療や制度が必要にもかかわらず,行き届かないまま孤立した状態にあるのが実態だ.
「人と出会える場があるといい」
調査では,若年性認知症を発症した3人の当事者にも話を伺った.若年性認知症の発症平均年齢は51歳.発症を機に離職する場合が多く,経済的な問題など家族の暮らしへの影響も大きいが,支える仕組みや制度が不充分なため制度の狭間におかれている.
話をしてくださった3人も企業に勤めている中で発症し,仕事のミスが増えたり,業務内容が記憶できないなど仕事が続けられず離職.その後,支援機関につながったことで,若年性認知症の人が集う「りんカフェ」に通うようになったと言う.「りんカフェは人と出会える場.そういった場がもっとあるといい」,「認知症と気づかず,“隠れ認知症”で1人悩んでいる人たちは多い.何か自分で役に立つことがあればやりたい」と語ってくださった.
既存の制度や仕組みでは支えきれず,狭間におかれている人たちの背景には,複合的な問題が重なり合い,生きづらさを感じている人が多い.一方,支援者と出会ったことで適切な資源につながり,居場所を見つけ,生き直そうとする人たちがいる.
(三石麻友美)
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