ある日,1人の職員が仕事の合間にヤギ小屋に目をやると,2頭は人の気配に気づいて,職員のほうに顔を向けていたそうです.
……「あれっ??」何か違和感が.もう一度目を向けると,楽々が小屋の外に出ているではありませんか‼
2頭がやってきて間もないころ,まだ環境にも人にも慣れていないときに,外に出たタイミングで逃げてしまったことがありました(今思えば,そのときも楽々でした……).そのときは,楽々もパニックになってしまったのか,すごい勢いで道路のほうに走り出てしまったのです.なんとか捕まえて,無事に小屋に戻すことができましたが……まさかの,悪夢再び !?
こちらが焦りながら下手に近づいて以前のように興奮させてしまったら,また道路に飛び出してしまうかもしれない.それを心配した職員は,事業所にいた職員に声をかけ,複数人でそっと近づいて無事フェンスの中に戻すことができたそうです.
今回の脱走の原因は,扉につけている南京錠のかけ忘れでした.大きくなってきた2頭は力も強くなっています.たまたま鍵がかかっていなかった扉を頭で押して,運がいいのか悪いのか開いてしまったのではないかと推測しています.今は,扉が2頭に押されたくらいで開かないように,切った木の幹を使って対策をしています.もちろん,鍵の閉め忘れにも気を付けています.
ヤギはもともと臆病で,気が小さくて,寂しがり屋なのだそうです.たまたま外に出てしまった楽々ですが,生まれたときからいっしょにいる喜々はフェンスの中にいましたし,いつも過ごしている小屋から自分だけ離れるのは不安だったのかもしれません.それとも,自分で出たことはなかったから,フェンスから出た認識をしていなかったかも…….そう感じるくらい,何もなかったかのように近くの草を食べながら,のんびり過ごしてくれていて助かりました.一方,外に出られなかった喜々は何を思っていたのでしょうか?「なんで楽々だけ外に行けたんだろう?」と不思議がっていたかもしれません.
後日,近所の人と話しているときに今回の脱走劇を話題にしたところ,「あ~この間出てたね.草食べてたね」と.通りかかったときに見かけて「外に出して草を食べさせているんだな」と思っていたとのこと.ヤギが出ている! と驚くことなく,地域の人が普通のこととして温かく見守ってくれていたことを知りました.ありがとうございます.
(記 宗野 文)
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