やどかりの里にやってきた2頭のヤギ,喜々と楽々.ご飯をあげたり小屋の掃除をしたりと,日々のお世話は欠かせません.
日替わりで担当するお世話係の1人が辻野操さんです.普段はエンジュ(高齢者向け弁当を作るやどかりの里の事業所)で働く,やどかりの里のスタッフです.
辻野さんが当番を務める月曜日,ヤギ小屋からは「おはよう~」「お腹空いた?」,喜々と楽々に元気に話しかける声が聞こえてきます.幼い頃からヤギと触れ合ってきたという辻野さんにお話を聞きました.
―お世話係になったきっかけを教えてください
「ヤギのお世話係をやってみない?」と声をかけてもらったんです.ただ,ちょうど愛犬を亡くした時で,正直迷いがありました.情がわいた時,その存在を失うのはあまりに悲しい.だから最初は,喜々と楽々にも距離を置いて関わろうと思っていました.でも実際に接してみると,やっぱり可愛いですね.当番の前日から,2頭にあげるにんじんを切って準備しています.
―ご実家でもヤギを飼っていたんですよね
福島の実家では,ヤギやニワトリなど動物を飼っていました.私がいた頃ヤギは2頭いて,今でもいとこの家でヤギを飼っています.ヤギのミルクも飲んだことがありますよ.味はちょっと苦手ですけど……
―ご実家のヤギと喜々と楽々,何か違いはありましたか?
実家のヤギは大人しくて,名前を呼べば寄ってくるような人慣れしたヤギでした.喜々と楽々は大きくて,頭突きされたりタックルされたり,慣れるまではたいへんでしたね.ヤギ小屋はどうしてもスペースが限られているので,怪我をしないように気を付けていました.
あとは実家のヤギは水嫌いだけど,当たり前のようにシャワーを浴びていたんです.喜々と楽々もお風呂に入れてあげたい.でもいかんせん体が大きいので難しそうですよね.
―いつも楽しそうに話しかけている姿が印象的です
喜々と楽々は,今では大事な話し相手なんです.「おはよう」から始まって,「ちょっと聞いてよ,こんなことがあってさ」と愚痴も聞いてもらっています(笑).誰も信じてくれませんが,楽々はお手もしてくれるんですよ.機嫌が良い時に限りますが……
―お世話係として大切にしていることはありますか?
動物も人間と一緒で,コミュニケーションが大事.マスク社会ですが,マスクをとって,目を見て話すようにしています.いけないことをした時にも,きちんと目を見て「駄目だよ」と言います.言葉は話さないけれど,こちらが言うことを理解してくれている気がしますね.
喜々と楽々と接する姿は,まるで母親のよう.「美味しいものを食べて,運動量が少ないので太りすぎ」という声も,2頭への愛情があってこそ.お世話係や地域の方から日々愛情を注がれ,喜々と楽々は今日も元気に鳴いています.
(記 萩﨑 千鶴)
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