エシカルな視点と行動で社会の課題に取り組む エシカルとは,倫理的な観点や価値観に基づいて行動することです.この言葉は,行動や意思決定が倫理的で社会的に望ましいかどうかを判断するときに使われます. 倫理観は人や文化によって違いますが,エシカルな視点は,社会や未来への責任感を持つことであり,持続可能な世界やこれからの地域社会を考える上で重要な指針となります.
しかしながら,現在の社会には,権利侵害や自然破壊,食品安全やエネルギー問題,健康や福祉の不平等など,解決を要する課題が数多く存在します. それでは,私たちはエシカルな社会を目指して何ができるでしょうか.
消費者としては,使うものや食べるものの背景や影響を考えて選ぶことができます.例えば,環境に配慮した商品や,公正な労働条件で作られた商品を選ぶといったことです.生産者としては,作るものや提供するものの品質や安全性,伝統や文化などを考えて行動することができます.地域住民としては,地域のあり方や問題や解決策について話し合い,参加することができます.
やどかりの里では,エシカルな価値観を実践するさまざまな活動を行っています.その一つが,やどかり農園の取り組みです.やどかり農園が実践するのは,無肥料自然栽培という化学肥料や農薬も有機肥料も使わない農法です.この手法は,土壌や生物の多様性を守りつつ,環境に優しい農業を追求しています.やどかり農園はこの農法で作った野菜や干し芋などの加工品を販売し,環境と消費者に配慮したエシカルな農業を実践しています.
また,つなぐ・つくるプロジェクト(以下,プロジェクト)の地域拠点として,5 月にオープンしたエシカル cafe「としょかんのとなり」では,フェアトレードで調達したコーヒーやカカオ豆,地元産の米や野菜,発酵調味料を使った食事や飲料を提供しています.さらに,建築現場で使われた余剰の材料を再利用してテーブルを作ったり,不要になった椅子をアップサイクルするなど,資源の無駄を減らし環境に優しい取り組みを行っています. また,太陽光発電を活用した市民電力の取り組みとして「みぬま電力」を立ち上げ,災害時に地域の人たちに電力を供給することを目指しています.市民電力は,地域の防災や再生可能エネルギーの普及,地域の自立にも寄与する可能性を秘めています.さらにプロジェクトでは.地域の人たちが抱えるニーズや課題を聞き取り,それに適した情報提供や相談に応じる「まちなか保健室」の展開など,地域全体の健康や福祉の向上を目指した取り組みを行っています.
私たちにできることはまだまだあります.法律や制度が追いついていない新しい課題や複雑な状況に対しても,エシカルな視点から積極的に対話し,新たな解決策を模索することも大切です.そして,私たちの行動が,持続可能な環境と共に,尊厳と共感に満ちたエシカルな社会の実現へとつながると信じて進んでいきましょう. (記 宗野 政美)
Comentarios