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「好き」の気持ちで関わって

根っからの動物好き 

 私はやどかりの里で働き始めた頃から20数年,常に生き物と暮らしている.動物好きの主人の影響も大きいが,実家にいた頃に動物を飼うことができなかった反動で,ハムスター,リス,フェレット,金魚,犬,カブトムシたちと暮らしてきた.さいたま市緑区の自然豊かな暮らしの中で,トカゲ,ヤモリ,バッタ,カマキリ,ダンゴムシとも仲良しだ. 


そんな私にとってヤギの嬉々と楽々は,これまで触れ合ってきた生き物の中で最も体が大きい生き物であり,何とか仲良くなりたいと思う相手である.


やどかり情報館に行く度に,必ず嬉々と楽々に会いに行く.首や横腹をシャリシャリ,ボリボリと撫でると,あの独特の瞳で見つめてくる.正直何を考えているのかはよくわからないが,大きな体を目一杯寄せてくる姿はとにかく可愛い. 

 

ヤギのお世話はハラハラドキドキ 

日曜日はやどかりの里の職員が順番に彼らのお世話をする.私はもちろんお世話係に手を上げた.初めて臨んだ一人でお世話をする日.緊張しつつ,何か手順を忘れていないか,ヤギってこんなに大きかったっけ? などと気を散らしていたら,自分がパドックから出入りをする際にスル~っと嬉々が外に出てしまった.


体を掴んだが毛が抜けただけで,あの大きな体を私がコントロールすることは到底できなかった.思わず追いかけたら小走りで逃げていく.まずい! 走り出して道路に出て車が来たらどうしよう‼ と混乱する頭で,「嬉々! ごはんにしよう!」と呼んでみた.


すると,嬉々は立ち止まりこちらを見つめた.あの瞳で.そして小走りに戻ってきてパドックに入ってくれた.


あの時のドキドキは今も忘れられない.人の言葉を理解し,信頼してると思えて心底ほっとしたが,怪我でもしたら大変だから気をつけなくちゃ,と意気込んで臨んだ次のお世話の日,今度は楽々がパドックの外にスル~っと出ていった.……またか! 


前回の経験から,追いかけたら逃げることはわかっていたが,動揺してちょっと追いかけてしまった.すると彼女はブロック塀を超えてお隣の畑との間の道に出てしまった.


低いブロック塀だが,道とパドックには高低差があり,塀を超えて帰ってくることは期待できなかった.あ~あ,どうしよう…….今回は前回よりも難易度が高い.


楽々のお腹をシャリシャリ,ボリボリ撫でながらしばし考えた.そうだ,と私は散歩用のリードを取りに行き首輪につけた.


そしてやどかり情報館の外周を一緒に歩き,ちょっとだけ散歩を楽しんで彼女とパドックに帰った.小さな小さな冒険の旅だった.この時のドキドキも忘れられない. 

 

思いが届きますように…… 

会いに行けば,今日も嬉々と楽々は体を目一杯寄せて,あの瞳で見つめてくる.やっぱり何を考えているかよくわからないし,仲良くなったのかもよくわからない.でも可愛いのだ.だからまた会いに行くし,お世話もさせていただく.この「好き」の気持ちが彼らにも伝わっていると信じている. 

(記 堤 若菜)



 

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