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「働きづらさ」を抱える人の「働く」を考える

 日本にはさまざまな「働きづらさ」を抱え て,「働きたくても働けない」人が 1,500 万人 以上(日本財団の就労困難者の推計調査 2018 年)いることをご存知だろうか.


 障害により通勤が困難,家族の介護や子育 てにより勤務時間が制限される,引きこもり の期間が長く働く自信がないなど,抱える「働 きづらさ」は多様だ.


 国の就労支援策は,障害者,母子,生活困 窮者など縦割りで,複合・複雑化したニーズ に対応する包括的な支援策となっていない. そのため,制度の谷間にあって,必要な支援 を受けられない人が依然として取り残された ままとなってしまう大きな課題がある.


 やどかりの里は, 2020 年 1 月から「誰一人 取り残さない社会をめざして」を合言葉に,「未 来を拓く つなぐ・つくるプロジェクト」に取 り組んでいる.このプロジェクトでは,地域 で暮らす人の「働きづらさ」や「生きづらさ」 に焦点を当て,多様かつ柔軟な働き方を実現 するためのソーシャルファームの創設を掲げ ている.


 ソーシャルファームは,社会的課題を福祉 の側面からだけでなく,ビジネスの中で解決 しようとする形態である.


  現在,プロジェクトでは,精神保健福祉領 域に留まらず,他領域の人たちとともに,地 域社会から取り残されている人たちの実態把 握を進めている.そして,地域で活動する人 や団体からの話題提供や視察を重ねてきた. その中で,ヤギ牧場を作りヤギレンタルによ る除草作業や,ヤギ乳製品の加工,レストラ ンやカフェの運営,買い物を通じて地域の交 流を生みだす移動販売車の稼働,自立分散型 エネルギーの構築など,さまざまな事業の可 能性が見えてきた.

 

 複数の事業を連動して行うことにより雇用 の場を広げ,「働く人たちの多様性」と「働き 方の多様性」を事業に活かせないかと考えて いる.


 また,このような場ができることで,見沼 の自然を生かしながら,地域で孤立しがちな 人たちにとっての新たな「居場所」として, また,よろず相談や人と地域資源がつながる ための交流の場としても活用する計画だ.こ れらを進めるにあたっては,ファイザープロ グラムの助成も大きな後押しになっている.


 ソーシャルファームは,ヨーロッパで企業 でもなく,福祉的就労の場でもない第3の雇 用の場として発展している.日本ではまだソー シャルファームの形態が確立しておらず,今 後新たな雇用の場の1つとなるためには,法 律や予算など何らかの支援策が必要だ.


 


また, ソーシャルファームが社会的課題の解決を目 的とした雇用の場であることが広く認知され, その必要性と意義について認識されていくこ とも不可欠である.そのために私たちは今何 をしなければならないのか.1 人 1 人が「働き たくても働けない」人の「働きづらさ」に目 を向け,その状況を変えるための方策を考え, 行動することである.このプロジェクトの取 り組みは,まさしくその第一歩なのだ.




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